幼児の兄弟ゲンカ〜おもちゃの取り合いで仲良く遊んでくれません!の相談にお答えします〜
保育士でベビーシッターをしています。
今日はおもちゃの取り合いについてです。
兄弟間でおこる取り合いだけでなく、
「うちの子、いつもおもちゃを他の子に取られちゃうんです。」
「いつも他の子のおもちゃを無理やり奪っちゃうんです。」
という場合も、広くは同じ解決法になってくるかと思います。
では先に、結論から述べますと、
解決策としては、
(1)子どもの様子をよく観察しておく。
(2)子どもの立場で気持ちを汲む。難しければ、大人に置き換えて考えてみる。
(3)子どものうまく伝えられない気持ちを代弁する。
(4)同じおもちゃがあれば、一人に一つずつ与える。または別々に遊ばせる。
というのが大きなポイントとなってきます。
そして大前提として、大人は基本「サボっちゃダメ」ってことになります。
保育園でも家庭でも、おもちゃの取り合いによるケンカは毎日毎時間発生します。
(私は異年齢保育をしているので、兄弟姉妹のケンカに近い事例をたくさん経験しています。)
だけど、上のポイントを押さえて、きちんと大人が間に入れば、ほとんどの場合、子どもたちの納得した良い表情を見ることができますよ。
例を挙げてみましたので一緒に考えてみましょう。
兄妹の事例
太郎くん:3歳 兄
花子ちゃん:1歳 妹
・太郎くんは、ミニカーを並べて遊んでいました。
・そこへ花子ちゃんがやってきて、お兄ちゃんの並べていたミニカーをハイハイでバラバラにし、ミニカーを両手に持ってフリフリ笑顔。
・太郎くんは、花子ちゃんが持っているミニカーを力ずくで取り返し、花子ちゃんを転ばしました。
・花子ちゃんは泣きました。
(そして、だいたい運悪く、ここのシーンだけ親に見られて、太郎くんが怒られることになる。)
それではこのケースで、解決策に当てはめていきましょう。
(1)子どもの様子をよく観察しておく。
そもそも、花子ちゃんが泣くまでの経緯をよく把握していますか?
花子ちゃんが泣いたのは、確かにお兄ちゃんに転ばされて驚いたからかもしれません。
そして、力ずくで奪い返した太郎くんもマズかったかもしれません。
しかし、何もなかったのに、太郎くんは急に思いついて花子ちゃんに暴力をふるったのではありませんね?
そうです。
太郎くんから見たら、花子ちゃんは破壊神で強奪魔です!
もちろん、花子ちゃんに悪気はありません。
この理由となる部分を、よく見ておく必要があります。
これができない場合は、そもそも解決法(2)(3)に進むことができませんから、はじめから解決法(4)に進んだ方が良いでしょう。
それでも起きてしまったときは
「大人の私がよく見ていなくてごめんね。」
と言うしかありません。
(2)子どもの立場で気持ちを汲む。難しければ、大人に置き換えて考える。
太郎くんは、どうして花子ちゃんを泣かせる結果に至ったのでしょう?
ミニカーを一生懸命並べていたのに、壊されて奪われて、邪魔されたくなかったと思われます。
大人から見ると、「そんなたかがミニカー並べてるの邪魔されたくらいで、またやればいいじゃない?」「花子ちゃんを転ばすほどのこと?」と思われるかもしれません。
本当に本当にそんなことがあって良いのですか?
自分に置き換えて考えてみたらどうですか?
あるいは、大人どうしでそんなことをしていますか?
女性同士のお泊まり会。
あなたはメイクをして、ヘアアイロンをして、準備を進めています。
そんななか、友人が勝手にあなたのポーチを広げて中身を床にぶちまけ、ビューラーを壊し、ヘアアイロンを無言で強奪し、鼻歌を歌いながら使い始めたら、もう友達やめようと思いませんか?
その話を聞いたあなたの夫が「別にメイクくらいいいじゃないか。その程度で怒るか普通?」なんて言われたら、どうでしょう?
大人どうしならダメなことが、なぜ子どもだと良いという判断になってしまうのでしょう。
たかがミニカーくらいでと思わずに、太郎くんの気持ち、花子ちゃんの気持ちにたって、考えてみましょう。
(3)子どものうまく伝えられない気持ちを代弁する。
さて、この二人にはどういうふうに声をかけましょうか?
お互いの気持ちを、代わりに大人が伝えてあげれば良いだけです。
「太郎くん、一生懸命並べてたのに、花子ちゃんに邪魔されちゃって嫌だったよね。」
「花子ちゃん、お兄ちゃん上手に並べてたから、一緒にやりたくなっちゃったかな。」
そして、この場合では、お互い謝らなければいけないところがありそうです。
太郎くんは、理由はともあれ暴力をふるってしまいました。
花子ちゃんは、兄の遊びを邪魔して強奪してしまいました。
「花子ちゃん、お兄ちゃんに邪魔してごめんねだね。」
「太郎くん、花子ちゃんが邪魔してごめんね。だけど、花子ちゃんも、転んじゃってびっくりしたみたいだよ。」
ここで、実際に「ごめんね」の言葉が太郎くんから出てくるかどうかはわかりません。
でも、無理やりにでも言わせようとしなくても、顔を見れば「確かに転ばせたのはマズかったよな〜」って書いてあります。
その気づきが太郎くんにあり、「大人は、僕が邪魔されて嫌だったことをわかってくれた」という納得感が残っていることが大事なのかなと考えています。
年齢や成長によって、本人から言葉で表現ができるようになるために、何度も繰り返す必要があるかもしれません。
(4)同じおもちゃがあれば、一人に一つ与える。または別々に遊ばせる。
これはもう簡単ですね。同じものを与えておくと、しばらくは取り合いにはなりません。あくまで「しばらくは」ですが。
それか、仕切りでも作って、別に遊ばせるのもひとつの手です。
言葉で交渉ややりとりができるようになるまでは、ずっと大人がついて見ていないと、(1)観察、(2)気持ちを汲む、(3)代弁、という流れをふめません。
そういう意味で、大人はサボれないのです。
とはいえ、ずっと見ているのが難しいときもあります。
保育園でもそうです。
あっちでもこっちでも取り合いが発生していると、すべてをはじめから見ていることができないときがあります。
こうなったら、双方に諦めてもらって、別々に引き離すしかないのです。
応用?
少し慣れてくると、この事例の場合なら、
花子ちゃんが太郎くんのミニカーに手を伸ばそうとしに行く途中で、止めて声をかけます。(大人どうしならここで会話が発生すると思われます。)
「花子ちゃん、お兄ちゃんとっても上手に並べてるね。花子ちゃんもやってみたいの?」
「太郎くん、花子ちゃんもミニカーがほしいんだって。貸してもらえますか?」
太郎くんが貸してくれたとき
「ありがとう! 花子ちゃん、お兄ちゃん貸してくれたよ。ありがとうって言おうか。」
太郎くんがダメと言ったとき
「わかったよ。教えてくれてありがとう。」
「花子ちゃん、お兄ちゃん貸してくれるミニカーないって。だけど、花子ちゃんが遊べるおもちゃなくて残念だね。じゃあ、他のおもちゃ貸してもらえるか聞いてみよっか?」
「太郎くん、花子ちゃん遊べるおもちゃがないんだって。何か貸してもらえるおもちゃはあるかな?」
太郎くんがダメと言ったあとは、必ずしも太郎くんに花子ちゃんのおもちゃの面倒をみてもらう必要はありません。(でも、ホイホイっといくつかおもちゃを与えてくれる子が多い気がします。)
太郎くんの状況によっては、大人が花子ちゃんに「じゃあ違うおもちゃを探そうね。」というときもあります。
答えは太郎くんの顔を見たらだいたいわかります。
「ダメって言ったのはちょっとかわいそうだったかな」って顔をしているか
「俺はいま集中してる」っていう姿勢か。
少し長くなりましたが、このような事例があれば、こんなふうに対応しています。
事例は3歳1歳でしたが、5歳と0歳でも、1歳と0歳でも基本は同じです。
正解は状況に応じて変わると思いますが、最終的にはお子さんの顔を見て、満足そうにしていれば正解です。
はじめからうまく対応できなくても大丈夫です。
そして、毎回代弁している余裕がなくなるのもよ〜くわかります。
それでも、丁寧に声をかける回数を重ねれば重ねるほど、子どもに納得感や安心感が出てくるためか、落ち着いて穏やかに過ごせる時間が増えてきて、結果的に大人も楽になるかもしれません。
あくまで参考程度に、できるときにできる範囲で試行錯誤していきましょう。
次は『「貸して」の答えが「いいよ」でなくてもOK』という記事もアップしたいと思います。