人情と危機管理〜熊田曜子さんの児童館騒動について保育士の私が思ったこと〜

 

はじめに断っておきますが、この記事は熊田さんを擁護も批判もしません。なぜなら、彼女が児童館での出来事を公にした目的を、私には知りようがないからです。単純に日記として書いただけなのか、これから利用する人への注意喚起なのか、改善要望なのか、または有名人ゆえに炎上商法などと言われれば、私には判断のしようがないわけです。さらに、時間をかけてじっくり調べたわけでもありませんから、私の思い込みと憶測も存分に含んでおります。それでは書いていきます。
 
 
私がこの騒動について知ったときの、最初の感覚は、「低月齢の子どもを抱っこしてても入れないのかー。」でした。あくまで感覚ですよ。感覚としては、「2人遊ばせて1人抱っこなら、2人ってことでいいんじゃない?」と思ったんです。
 
しかし、もう少し冷静になって考えてみると、やっぱり児童館の職員さんの対応は完璧だったと思いました。
 
安全上の理由から、というのが最大の理由ですが、おそらく保険の適用なども考慮されての規則なのではないかと思っています。
 
私は保育士で、ベビーシッターとしても働いておりますが、室内で1対1で子どもと遊んでいても、ヒヤッとすることは数え切れないほどあります。
 
急に逆立ちし始めたり、後ろ向きにダッシュし始めたり、高速回転を始めたり。大人では考えられない謎の動きを不意打ちでしてくれます。そしてよく転ぶんですね。いくら保険に入っていても、こわくてこわくてたまりません。
 
これが、児童館だったらどうでしょうか。ある一定の広さに対して、利用者の数を制限していたということは、少しでも接触による事故を避けようと配慮されていたのではないかとも考えられます。
 
また先ほども言及した通り、保険の適用も考慮されていたのだとすれば、ある程度児童館側が責任を持つ形だったのではないでしょうか。
 
ベビーシッターをしていても、この保険の適用についてはやはり、子どもの安全に関わってくる部分ですから、非常に厳しいです。
 
例えば、あるシッターさんが、3歳の子どもの面倒を見るよう依頼されたとします。ところが、実際に行ってみると1歳の兄弟児がいて、3歳と1歳の二人をお願いされた。こういう場合、保険は3歳の子どもにしか適用されません。1歳の子どもが3歳の子に突き飛ばされて頭を打って怪我をしても、自己責任にしかならないのです。
 
どうでしょうか。困っている親御さんが目の前にいたら、「やっぱり下の子も一緒にお願い。」って言われると、気持ちとしては「もちろんです。」って言いたくなります。だけどそれは無責任とも言えるわけです。
 
この児童館ではもしかしたら、「3人連れていて、1人が怪我をしても、残りの怪我をしなかった2人までしか保険適用になりません」ということにもなりかねない。そういう事情があったのかもしれません。
 
そして、気づきました。最初の感覚でこそ、「そこは2人ってカウントしてあげても」なんて、人情では思いましたが、自分の仕事で置き換えてみたら「あ、人情では子どもの安全に責任を持てないわ。」と、考えを改めることになりました。
(保育の仕事してるのに気づかないって、ずいぶん平和ボケしてるな。)
 
きっと児童館の職員さんも、気持ちの上では「1人は抱っこしているなら使っていいですよ。」って言いたいだろうと思います。でも、ここで例外を出すわけにもいかないし、きちんと理由がある規則ですから、危機管理上NOと言うしかなかったんでしょうね。誰も得しない規則のための規則なら批判の的にもなるかもしれないですけど、この場合はそうではありませんから。
 
それから、この規則があることと、3人以上の子育てを拒否されたというのとは、また別の議論になってきます。
 
今回は、「この施設が子どもの安全に配慮した結果、2人まで」という規則になったわけですから、それはもう覆せません。覆しちゃダメです。
 
しかし、これが知られたことによって、「3人以上の子どもがいる家庭でも利用できる施設になってほしい」という要望は、それはそれで出てきて当然だと思います。
 
今後、今回の話題がきっかけで、より安全で、より利用者の幅を広げた施設が増えることを期待します。