年子の兄妹ゲンカを見てしまった〜正しい導き方を考える〜

たまたま動画サイトで年子(2~3歳)の兄妹ゲンカを目撃してしまった。私が見たところでは、子どもにとって理不尽なことを親が強いていると感じましたが、コメント欄では「兄が悪い」「妹がかわいそう」など、どちらかを擁護する発言や「親が悪い」「どっちの子もかわいそう」と親を批判するもの、逆に「親を批判するのはまちがっている」「親は愛情を持ってホームビデオを動画サイトに投稿している」「奪い合って成長する」などの意見が見られました。 コメント欄も含めて大変不快な気分になったけれど、「じゃあ親はどのように子どもと話し合うのがいいんだろう?」と思ったので、自分なりに考えをまとめてみることにしました。
 
まず先の兄妹ゲンカはおおまかに以下の流れでした。
 (1) 兄のオモチャを持って妹が遊び始める。
 (2) 兄は自分のオモチャを取られたことに怒り力で取り返す。
 (3) 親が「そのくらい貸してあげなさい」と兄を叱る。
 (4) 兄が「嫌だ」と主張する。
 (5) 親が「なんで仲良く遊べないの」と兄に怒る。
 (6) 兄が妹を張り倒す。
 (7) 親が妹を擁護する。
 (8) 最初に戻るを繰り返し、兄は次第にヒステリックになっていく。
 
よく見る光景だけど、これでは兄妹どちらもかわいそうだと胸が痛みました。ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。
 
(1) 兄のオモチャを持って妹が遊び始める
兄のオモチャを勝手に妹が使い遊び始めてしまった。妹は当然悪気はありません。まだ誰のものという区別も曖昧のように見受けられました。だけど、悪気の有無にかかわらず、人のものを勝手に使い始めてはいけませんよね。まだ「貸して」と言葉で交渉できない年齢なら、妹の代わりに親が先に「妹ちゃんが遊びたがってるんだけど、貸してくれる?」と一言声をかけた方が良いでしょう。これによって妹も「人のものを借りたいときは、一言声をかける」というマナーを覚えられるでしょう。
 
大人の世界で考えてみてください。私ももういい年したオバさんですけど、もし自分の化粧品を勝手に妹が使っていたら「ちょっと!一言いってくれたらいいじゃん!」って思いますよ。もともと共有しようと決めていたり、なんとなく一緒に使うものってわかっているなら気にしませんけど、急にそんなことになったら、あれ?って思うはずです。夫婦間でだって、「これ借りていい?」とか聞きあったりしませんか?
 
 (2) 兄は自分のオモチャを取られたことに怒り、力で取り返す
いくら自分のオモチャを無断で取られたからといって、暴力で解決しようとしてはいけません。きちんと言葉で「それは勝手に使われたくない」と伝えなくてはいけません。親は「妹ちゃんが勝手にお兄ちゃんのオモチャを取ったのはいけなかったね。だけど力で訴えるのはよくないよ。」と話してあげた方が良いでしょう。そうすれば、「自分の理不尽さを親はわかってくれた」という安心感も出るので、なおのこと「暴力はいけない」というのがすんなり入ってきやすくなるでしょう。
 
 (3) 親が「そのくらい貸してあげなさい」と兄を叱る
「そのくらい」なんて、兄にとっては大事な大事なオモチャなのに、人の価値観を軽視するなんて、親にされたら子どもはショックですよね。ただでさえオモチャを取られて理不尽な思いをしているのに、その上「そのくらい」なんて否定されちゃったら素直になれません。
 
先の大人世界の例の続きで考えてみたらわかりますね。「一言いってよ!」ってなったとき、もし親が「化粧品くらい勝手に使わせてあげなさいよ」なんて言ったら、どうでしょう? 貸すこと自体が嫌なわけじゃないんだ。でもこれはブランド限定のやっと買えた大事な大事な品でうんぬん。「たかが化粧品」なんて、なぜ親に価値を決めつけられなきゃいけなんだ!と思ってしまうかもしれませんね。趣味のものなんて、他人から見たらガラクタですよ。でもその価値は本人が決めることですから、周りがとやかく言うことは控えたいですね。たまに見かける「夫の趣味のものを妻が無断で処分してしまった」というのもヒントになるかもしれません。
 
 (4) 兄が「嫌だ」と主張する
自分の意思表示ができるのはとても良いことです。普通に考えればわかりますが、「貸して」の答えが「いいよ」とは限りません。それなのになぜか、幼い子どもの間には「いいよ」の一択しかないと主張する親がいるのは解せません。 「貸して」の答えが同じ「いいよ」だったとしてもバリエーションはあるし、「ごめんね」と断る場合だって存在します。
 
例えば大人が二人で台所に立っているとき、水道の取り合いになることがあります。一人が洗い物をしていてもう一方がちょっと手を軽く洗いたいとき、「ちょっと水道いい?」「あ、じゃあこれだけ洗わせて」とかありますよね。断る例で言えば、「ちょっとパソコン借りていい?」「ごめん、あと2分でネット通販の限定セールが始まるから終わったらにしてほしい」くらいのやりとりがありませんか。
 
確かにオモチャには大人の例に挙げたような明確で合理的な理由はないかもしれません。でも、所有者である兄が「嫌だ」と主張している以上、親は無理くり意思を変えさせるようなことはすべきではないでしょう。「問答無用で貸せ」なんて、独裁者のすることです。
 
 (5) 親が「なんで仲良く遊べないの」と兄を怒る
兄の立場にたってみたらわかります。自分のオモチャを妹に無断で横取りされた上、理解者は誰もいない。理不尽な思いをするのに仲良く遊べるわけありませんね。親が「なんで仲良く遊べないの」と聞くなら、「なんで公平に状況を判断できないの」と子どもは聞きたくなるでしょう。
 
 (6) 兄が妹を張り倒す
(2)と同じく、暴力はよくないですね。ただ情状酌量の余地はありそうです。親は「急にオモチャを取られて悔しかった気持ちはわかるけど、倒されたら痛いよね。それだけは一緒に妹に謝ろうか。」と提案してみたらどうでしょう。少しは兄も受け入れやすいのではないでしょうか。
 
 (7) 親が妹を擁護する
兄のオモチャを横取りした妹を擁護するのはいかがなものでしょうか。動画のなかでは兄のオモチャを奪った妹は褒められていました。動画用のネタだとしても、本気になっている子どもには、かわいそうすぎませんか。妹を擁護して褒めている場合ではありませんね。親は「お兄ちゃんに貸してって聞いてみようね」「それはお兄ちゃんのだから返そうか」と中立の立場を示すべきだと私は思います。兄が理不尽な思いをするだけでなく、妹の教育にもならないからです。人のものをいたずらして褒められたなんて、とても良い経験とは思えません。妹ちゃんが将来このビデオを見たら一体どんな風に思うでしょうか。
 
 (8) 最初に戻るを繰り返し、兄は次第にヒステリックになっていく
自分の主張が誰にも理解されない。理不尽な思いをしているのに公正な裁きを受けられない。これはヒステリーを起こしたくもなりますよね。虐待とまでは言いませんけど、とても見られたものではないと思ってしまいました。
 
全体を書き終えての考察
・家庭ってコワイ
外からは見えないけど、こんな理不尽なやりとりが毎日行われているわけです。まだ幼児だから、親もコントロール可能かもしれませんが、親は両者それぞれの立場にたって中立に客観的に見ることをしなければ、子どもが成長してからが心配ですね。家庭って閉鎖的な場所だから、何が起こっているかわからない。子どもに歪んだ教育を与えているかもしれないこわさ。
 
 ・親は、誰からも注意されることがない
 この例は動画サイトのものでしたから、コメント欄で親の間違いを指摘する声もありました。一方で、親を擁護するコメントもありました。どちらにせよ大事なのは、親が省みる姿勢を持っていることだと思っています。残念ながらこの動画を挙げた親御さんは、擁護コメントだけを受け入れていましたので、改善は見られなそうです。逆に、「私は大丈夫かしら?」と振り返ってみようと思えた人は、子どもと一緒に成長できる人だと確信しています。
 
・子どもも親と同じ一人の人
子どもだって大人と同じ人間なのに、なぜか大人は子どもの主張や感情は軽視しがちで、親は子どもに理想を押し付けてしまったりしますよね。その方が楽だから、というのもわからないではないですが、こういう小さな鬱憤の積み重ねが、親への不信感に繋がりかねません。せっかく親が一部始終を見ていたんだから、子どもの立場にたって考える癖をぜひつけたいものです。ホームビデオを撮るくらい愛情のある親だからこそ、もう1歩だけ子どもに歩み寄った対応をしていけると良いなと思います。